「オレは尽くされないと好きにならないよ」
と言われたことがある。
その言葉を聞いた最初の印象は、「歪んでるな」だった。
でも、なんでそうなのかが気になったので、突っ込んでもっと詳しく聞いてみた。
どうやら、彼の場合は何かを犠牲にするくらい「自分のことが好きなんだ!」と分からない限り、相手のことを信じられないから、らしい。
確かに「好き」という感情は厄介で、簡単に言葉にできるけれど、それが本心かは発した本人にしか分からない。
例え全く恋愛感情がなかったとしても、口先だけならいくらでも「好き」と言えてしまう。
もしかしたら彼は、かつてそんな口先だけの「好き」を信じて痛い目を見た経験があるのかもしれない。
さらに、自分以外の人の「好き」の度合いを計るのは、とても難しい。
だから私も、かつて付き合っている彼を試すようなことをしてしまった経験がある。
心配してほしくて体調不良を大袈裟にアピールしたり、嫉妬してほしくてわざと他の異性の影をちらつかせてみたり。
全ては彼の私に対する見えない「好き」という感情を可視化させたかったからなんだ、と今は思う。
そう考えると、「尽くされないと好きにならない」という彼の主張も、あながち間違いではない気がしてきてしまった。
彼が歪んでいるというのなら、私も歪んでいるような気がする。
・・・恋愛って本当に奥が深い。
ちなみに、「尽くされないと好きにならない」という彼とは、私は尽くすキャラではなかったようで早々に疲れてしまってお付き合いにはいたらず終いだった。
今頃彼は、誰かに尽くされて幸せになっているのだろうか。